課題 >> 1. 「調査およびその使用」 を読んでください。

調査およびその使用

日ごとに、週ごとに、人は人生においてとても望ましいとは言えない状況に数多く直面することが考えられます。 人は、自分の運命を変えるなんてことはそうそうできるものではないと納得し、どうにかしてその状況を乗り切ります。 もしかしたら、数ヵ月の作業を要すると計画されたあるプロジェクトは、期待通りの成功を収めないかもしれません。会社の生産性は過去3ヵ月急激に低下しています。あるいは、ある人の自宅の増築が、最初に想像したよりも長くかかります。 こういった状況は、私たちの多くにとってはあまりにありふれた出来事になっています。

しかし、こういったことが通常の事態である必要はありません。 人々は幸せな生活を送ることができますし、人生のあらゆる領域においてその目標を達成することができます ― 個人個人でも、家族とともにでも、仕事などにおいてもです。 人がいったん自分で思い描いた目標は、達成することができるのです。 

もしそのような目標に到達していないのであれば、あるいはその人の状況が低下したり悪化したりしているのであれば、そこには確かな発見可能な原因があります。 これは、人々がしばしば認識していない概念です。物事は実際には引き起こされたのです。 ただ起こるわけではありません。 あらゆる状況の背後には理由があります。人々が自らコントロールすることのできる理由がです。

これを知らずに、人は自分の運命や未来を確かめようとして、しばしば「予言」、占い、あるいは占星術などに依存します。 多くの人はただ、何も悪くはならないとむなしくも望みをかけているか、人生とは普通もがき苦しむものだと信じるという考え違いをしているのです。 

例えば、ある年非常な凶作に見舞われた農民は、それに対する確かな説明を持ち合わせていません。 彼には、自分自身がこの状態を引き起こしたのだという概念はありません。 しかしそれを調査すれば、彼がそれ以前に、春植え用の穀物の種子をきちんと保管しておらず、そのために害虫に食い荒らされていたことを発見するでしょう。 これを知らずに彼は、あらゆる類いの奇妙な「理由」を考え付くか、あるいはただそれを不運のせいにすることでしょう。 

生産高の低い工場では、その組織が破産する前に生産性を上げようとして、経営陣は人事異動をしたり新しい労働者を雇ったりするかもしれません。 しかし役員たちは、その状況の原因を発見するために、会社の事業を本当に調べるのに必要な技能を持っていないのかもしれません。 綿密に調査した結果、その会社の会計課が請求書の支払いをしていなかったために、原料の供給元が配達を断っていた、ということを発見するかもしれません。 

人生のあらゆる領域における、あらゆるそういった状況を調べ、対処し、改善するためには、「調査」の技能が要求されます。論理的に考え、事態の真相を探り当てる能力です。

調査とは、注意深く発見すること、および事実を分類することです。 調査において、人は事実を突き止めようとして、特に原因を見付けようとして、何かの個々の項目を探し出し、それらを検討しているのです。 

適切な調査は、人が直面している事態の真相を探り当てます。 例えば、どのような組織においても、その生産が落ちていることに気付くことがあるでしょう。 これは最適ではない状況であり、調査され、原因が突き止められるべきものです。 調査はまた、個人の私生活においても、状態を改善するために利用することができます。 

調査を行う際に、あなたはこのように問いかけます。現存の状態に関して「私が理解していないものは何だろう?」 あなたは、ふたつの事柄が噛み合っていないことに気付くでしょう。それらは矛盾しており、理解することができないものです。 そこであなたはこのふたつの事柄を合理的に解釈しようとします。これらふたつの事柄を疑い、そしてあなたが理解していない別のポイントを得ることでしょう。 そしてこのポイントを理解しようとすると、また理解していない別の事柄を見付けるのです。 そうしてこれを続けていき、どこかの時点であなたは自分が調査しているその状況の原因に行き当たるのです。

どのような調査もこういった経路に沿って進むべきです。 人が困難の源に行き着くには、時には多くの問いを投げかける必要があるでしょうし、時には「あの騒音は何だろう?」だけで済む場合もあるでしょう。 ここに、素早くかつ緊急に行われた調査の例があります。ある機関士が船の機関室で勤務しています。 彼は、正常な知覚、それも熟練した知覚を備えており、自分の領域を観察しています。 シューッという異常な音を耳にします。機関室の然るべき状態とは相容れないものです。 その領域を詳しく調べ、小さな白い煙のようなもの以外には何も異常はないと気付きます。 見聞きしたものを結び付けてみます。 さらに詳細な調査を進めます。 バルブが壊れていることを発見します。 蒸気の管を閉じます。 

一言で言えば、(a)ある組織、もしくは何であれその人が調査しているものに関して、不完全に機能している部分を見付け、そして(b)それについて理解していないことを見付け、それから(c)その部分において不完全な機能に関わっている個々の人々に質問するか、もしくはさらにデータを得るためにその領域を調べます。 

この順序に続けて、トラブルの原因を特定すれば、その領域が再び正常に機能するように、その原因を処理できるようになります。 組織においては、ただこの3つのステップだけを何度も繰り返して適用することができます。その組織が極めて円滑に運営されるようにしておくには、普通はそれだけで十分でしょう。 

スタティスティックス(統計数値)は調査においてある役割を果たします。 スタティスティックスは、ある活動、領域もしくは組織の生産を、時間的により以前の時点と比較して示したものです。 もしスタティスティックスが上がっていれば、その領域が意図しているものにそれだけ近付いているということです。 調査をする際は、下がっているスタティスティックスを探します。 もちろん、これらは理解できないものなので、関係者に質問します。 彼らの答えには、調査を行っている人にとって何か全く筋の通らないものがあるでしょう。例えば「ジョシーが講習を受けているので、私たちは請求書の支払いができないんです。」 調査員は辻褄が合わないものだけを探しています。 それで、彼はそれを口にした人、およびジョシーに質問します。 これを行えば、遅かれ早かれ、本当の理由が出てくるのです。

人が、理解できない事態の手掛かりをたどっていくうちに、ふたつのうちのいずれかが起こるでしょう。 ひとつは、行き止まりとなり、それ以上全く進展しないという場合です。その時には、調査の本筋に戻ります。もうひとつは、さらなるデータが提供されるという場合です。 さらなるデータが提供された場合、その人はさらに多くの理解できない物事を発見することでしょう。 

この手順の秘訣は、飛び出している一本の糸、つまり何か理解できないものを見付け、質問することによってそれを引っ張ることです。 小さな猫が出てきます。 さらにいくつか質問して引っ張ります。 ゴリラの赤ん坊が出てきます。 さらに引っ張ります。 虎が現れます。 また引っ張ると、何と! シャーマン将軍の戦車が現れるのです!  

矛盾するふたつの事実に遭遇した場合、それらふたつの事実について質問し、理解できない別のポイントを手に入れます。 本当の理由が突き止められるまで、自分が理解できないものを追いかけるこの方法を続けます。   

人が怠惰であったり、愚かであったりすることは、理にかなっていません あなたはその根底で、組織の一部が動いていないことの、あるいは継続的な動揺の本当の原因を見付けるのです。

シャーマン将軍の戦車」を見付けた時、あなたは行動を起こすことができます。 

良くないスタティスティックスの裏には必ず理由があります。 真の理由が見えるまで、関係者に質問しなさい。 それは決して「アグネスは頭が悪い」というものではありません。 アグネスはタイピストとして雇われたが、タイプの仕方を全く知らなかった、という方が可能性が高いでしょう。 あるいは、その領域の役員が単に全く仕事にやって来ない、といったことです。

下がったスタティスティックスの真の説明は常に、とても容易に理解できるものです。 十分に質問すれば、あなたは本当の説明を手にし、それから行動することができます。 

この調査のテクニックは、初歩的であると同時に、極めて有効なものです。 単純な、もしくは複雑な状況に直面した時、その真相を探り当てるためにこれを適用することができます。そうすれば、その状況を解決し、人生における状態を改善することができるのです。 

調査の技能は実践することで向上します。 それは、理解できないものを即座に見付けることができるほどに研ぎ澄まされ、効果的になり得ます。 この能力は人間に生来備わっているものではありませんが、容易に獲得することができます。 調査をさらに迅速かつ効果的なものにするために、人は論理学の原理を理解し、適用できるべきです ― それは今日まで、誤解されてきたばかりでなく、不必要に込み入ったものにされてきた主題です。 

人の幸、不幸のめぐり合わせ。運。

管やチューブに装着された、液体や気体の流れを調節する装置。例としては、エンジン内の蒸気の流れを調節する装置がある。 そのような蒸気は極めて高い圧力下でつくられ、非常に熱い。 そのような蒸気が通る管のバルブが壊れると、圧縮された熱い蒸気が壊れたバルブから流出し、近くにいる人がひどい火傷を負う可能性があるため、その管を直ちに閉じなければならない。

前後がきちんと合っていない。筋道が通っていない。辻(つじ)は裁縫で縫い目が十文字に合うところ。褄(つま)は着物の裾の左右が合うところ。転じて、合うべきところがきちんと合うはずの物事の道理をさして「辻褄」という。

合衆国陸軍の戦車で、第二次世界大戦(1939–1945年)にはフランスやイギリスでも使われた。 アメリカ南北戦争(1861–1865年)で有名な将軍、ウィリアム・チカムシ・シャーマン(1820–1891年)にちなんで名付けられた。 ここでいう「シャーマン将軍の戦車」とは、ある状況の背景にある真の理由、または何かを止めようとしている人物の裏にある実際の理由をさして比喩的に使われている。

人が生まれながらに有する資質をさしていう。